つい一週間前から、事情があって私の実家で飼っている猫を一時預かりすることになった。11歳になる去勢済みのおっとりとしたスコティッシュで、爺ちゃんが大切にしている癒し猫である。クーちゃんという名前のその猫が来ることを家族全員が楽しみにしていたが、どうやら一番喜んだのは当家の愛猫シマタロウであった。緊張気味のクーちゃんの表情や態度を敏感に読み取りながら、あの手この手で一生懸命気をひこうとしていた。シマちゃんの社交術は実に見事で、仲良くしたいんだということを、けっして無理をせずわかりやすく表現していた。おかげで今では夜中に目を覚ますと、二匹で連れ立って悪さをしているのか、コソコソ一緒に隠れるほど仲良しである。
シマちゃんは、目が開くか開かないかの時に兄弟と一緒に魚屋さんの店の前に捨てられていたのを保護され、猫が数頭と狸が一頭いるお家で飼われていた。それを生後4ヶ月くらいの時にもらってきた猫である。そんな生い立ちでお母さん猫に育てられた期間は短かったが、兄弟や他の猫にいろいろ教育されたおかげで、見事に社会性を身につけることができたようである。やはり幼齢時の経験は人や犬に限らず猫にとってもすごく大切であるということを再認識した一週間であった。
シマちゃんのクーちゃんへの一生懸命なアピールを見ていると、他の猫と過ごした仔猫の時代はよほど楽しかったのだろうと思う。しかし、そろそろ帰さないと爺ちゃんが寂しがっているころだろう。